• 225月

    KENWOODのヘッドフォン「KH-KZ3000」ですが、お借りしてだいぶ経ち、エージングも十分かと思いますので、手持ちの他のヘッドフォンと比較してみることにしました。

    17910-604-296551

    th_DSC02012_LR6

    まずはKH-KZ3000からですが、とにかく優等生で期待以上の素晴らしいサウンドを聴かせてくれています。
    少し音からは逸れますが、側圧も他のオンザイヤーのと比べれば柔らかい耳当たりで、小さめの耳の人なら耳が収まってしまうかも。
    またこのタイプにしては低域側がオープンエアーっぽく感じるのはクアッドダクトエンジンの影響でしょうか。
    音漏れ自体は多いほうではなく、HD25-1 IIと比べても少ないくらいなのは、耳へのフィットが良いからでしょう。

    th_DSC02032_LR6

    中域より上はもう少しダイレクトに耳に届く印象になります。
    それが特に気になるわけではなく、他のヘッドフォンと聴き比べてみてようやく気づく程度です。
    メーカーのWebサイトなどを拝見するとどちらかと言えば低域を推しているようですけれど、むしろそれを支えている中域より上のクォリティの高さが活きているように私には感じられます。

    音楽のジャンルとしてはポップスやジャズのほうが見通しの良さが活きてくる印象です。
    クラシックだと客観的に聴いている印象が多少あって、没入感がやや不足するようにも感じました。
    原因はこのヘッドフォン自体が音の広がりを重視していて、前に出てくる感じがほんの少し希薄な方向性だからではないかと思います。

    th_DSC02068_LR6

    だたそれもアンプ次第でして、DigiFi NO.22の付録ヘッドホンアンプでは、帯域こそ広帯域なKH-KZ3000にとってはややナロー気味になりますが、音の厚みが増して、ウェルバランスになりました。
    この組み合わせならヴァイオリンに艶も出ますし、音のヌケも良くなります。
    なにぶんKH-KZ3000自体にクセが少ないだけに、アンプ側で好みの傾向に持っていくほうが相性が良い印象です。

    また、DigiFi NO.22の付録ヘッドホンアンプをモバイルバッテリーで駆動すると、音量を上げた際にやや低域が混沌とした印象が出てくるのもしっかり聴き取れてしまいます。
    そうした細やかな変化が聴き分けられるのも、KH-KZ3000のポテンシャルの高さゆえではないでしょうか。

    th_DSC02066_LR6

    そこで比較対象にまずは低域番長でもある、ゼンハイザーのHD25-1 IIを持ってきました。
    低域の強調感こそHD25-1 IIが強いものの、KH-KZ3000から替えた直後はナローレンジなのを実感させられます。
    最近、型番をちょっと変えてリニューアルしましたが、さすがに今となってはやや設計の古さもあるのかもしれません。
    逆に言えば、それだけKENWOODは現代的な設計に仕上がっていると言えると思います。

    ただ、HD25-1 IIは単なる低域の音の厚さや押しの強さだけではなく、音楽としての熱気のようなものも伝えてくれます。
    その点で、HD25-1 IIがロックに強いというのも改めてうなずけるものです。
    KENWOODの場合は、こういう唯一無二のクセものではないので、熱狂的に気に入るというよりも、安定したハイクォリティーを求める方向性で選ぶべきでしょう。

    th_DSC02049_LR6

    続いて同じゼンハイザーのHD598と比較します。
    意外なことにこの両者、意外と音傾向が似ています。
    HD598のほうが能率がかなり低い代わりに、低域のダンピングファクターが高い印象を受けました。
    音の広がりもオープンエアーだけにHD598のほうが有利ですが、KENWOODも横方向の広がりについては意外と負けていません。

    そして、こうやって結構な時間、聴かせてもらっていて、ようやくちょっとだけKENWOODらしさ、といいますか、クセのようなものも発見できました。
    それは楽器の分離が非常に良いがゆえに、その楽器の質感のようなものも感じ取れるのですが、それがどの楽器でもやや類似していて、「アルミの面落とし」のような感触なのです。
    ゼンハイザーで聴くと、そこまでしっかり分離できなかったり、少し霞がかかったようなところはあるものの、それぞれの楽器に耳をやると、楽器それぞれの素材に近い音がしているように思えました。

    th_DSC02023_LR6

    これが何処からくる差異なのかは推測でしかありませんが、ドライバーが比較的耳へとダイレクトに向き合っているので、ドライバーの音の質感を感じてしまっているのかもしれません。
    もちろんそれは弱点と言えるほど強いものではなく、むしろクリアさや分離の良さに繋がっているのでしょう。

    あとはもうケチを付けるところが全くない、ホントに優等生なヘッドフォンです。
    それだけに試聴が気軽にできない「直販サイト限定モデル」なのが残念なところです。
    せめて試聴貸し出しとか、◯週間返金保証のようなサービスをやってもらえたら良いかなと思います。
    あと、音質とは直接関係ありませんが、バランスリケーブルの提供(あるいはプレゼントキャンペーン!?)もあれば、もっともっと人気が高まるヘッドフォンではないかと感じました。

    (2016/5/26 18:30追記)
    ADOLFO DOMINGUEZ(アドルフォ・ドミンゲス) の全国20店舗に試聴機が設置されていますので、ヘッドフォン目当ての方には多少敷居は高いかもしれませんが、試聴することは可能ですので、訂正して追記しておきます。

    17910-604-296551

    (当サイトでは、Amazonアソシエイトをはじめとした第三者配信のアフィリエイトプログラムにより商品をご紹介致しております。)

    Filed under: Mono Fellows
    2016/05/22 12:00 pm | KENWOOD KH-KZ3000 レビュー 比較編 はコメントを受け付けていません

Comments are closed.