MacBSの日常生活的日記

ACOUSTIC REVIVE RTS-30 レビュー 導入編

ACOUSTIC REVIVEのターンテーブルシート「RTS-30」を導入してみました。

RTS-30はシリコン系の制振材に幾何学的な溝を刻んだターンテーブルシートで、さらにシート内には貴陽石、トルマリンなどの天然鉱石を浸させてあります。
独特の溝の模様は同社のRGC-24KやREM-8でも似たような形状を見かけますが、12インチと7インチに合わせてややテーパー状になるように配慮されたであろう配置がまさにジャストフィットな印象を受けました。

うちのレコードプレーヤーはMICRO BL-99VとDENON DP-6000と、通常のターンテーブルシートが使いづらい機種ばかりなのですが、前者は吸着を使わない前提ならばなんとかなるだろうと。

以前、SAEC SS-300を試した時にサクション用のゴムと干渉しないことは確認できていたので、最悪2枚重ねにすることも考えていましたが、さすがにそれだと高さが高くなりすぎてトーンアームをかなり持ち上げなければならず、2枚重ね方式は断念しました。

幸い、RTS-30も外周部のサクションゴムとは干渉せず、中央部はシートの自重で十分押し下げられるので、吸着ポンプを外した状態でも問題なく使用できました。(もちろん吸着自体は使えませんけれど。)

早速、RTS-30を装着した状態でーンアームの高さを調整し、聴き慣れた盤から聴いていきます。
まず感じたのは音に芯が通ったなぁという点です。
この時点ではカートリッジにFR-2を使っていましたが、ちょっとした変動でセンター定位がブレやすい傾向のあるカートリッジなのですが、定位が安定し、それでいて左右のスピーカー外の広がりはフワッと広大になりました。
サクションすると盤の反りは相当に補正されるのですが、細かいフラッター的な歪みはやはり多少残るわけで、そうした細かな上下動や振動の影響が減ったからでしょう。

また、聴き比べるとこれまではやっぱりターンテーブル素材の響きが乗っていたのだなというのが良く分かりました。
とりわけ中高域で埋もれていた楽器の音色が存分に引き出されてきて、音数そのものも明らかに増えています。
明瞭な質感で力と歯切れの良い低域は特筆ものですし、これならむやみにカートリッジやプレーヤーを買い換える前にターンテーブルシートを試してみる価値は十分以上にあると言えるでしょう。

通常のターンテーブルシートで感じがちな、ゴムのような弾む感じの中低域の付帯音もなく、キレも抜群です。
また、Fo.Qのような制圧され過ぎるところも皆無で、デッドニングのマイナスイメージは微塵も感じられません。
スタビライザーのような窮屈さも出ず、開放感ありつつも緻密なサウンドになっています。
アナログ再生はターンテーブルやカートリッジ、ヘッドシェルなど様々な要素を楽しめるという面白さもありますが、一方でそれらのクセが重なり合って強くなり過ぎる部分もあるように感じています。
その点、RTS-30はそれらのマイナス要素を上手く補正してくれるところがあるように思います。
方向性としてはカンチレバーやヘッドシェルの剛性が高まったかのような変化ではないでしょうか。

さらに内周に行くにつれ、その効果は一層高まっていきます。
明らかに静電気が起きづらくなっていて、再生後に盤をターンテーブルから持ち上げる時に冬場はパチパチと盤が吸い付けられるほどだった静電気が、RTS-30を使ってからはほとんど感じられない程度にまで減少しています。
再生前に除電したり対策はなるべくやっているつもりですが、再生中に帯電していく部分について低減してくれるのはうれしい効果です。
音質にも大きな影響があって、帯域がこれまでよりも狭まらない感じを受けますし、歪っぽさも少なくなりました。
とりわけクラシックだと内周で盛り上がるものが多く、そうした盤では特に違いが顕著で、単に歪まないだけでなく、余韻まで鮮明になっています。
内周外周といった違いはもちろん、外部からの振動などの変動要素を吸収して安定感を上げてくれるおかげで、ピーキーさが大きく減退して、安心して聴けるサウンドになりました。

ハウリングマージンも大幅に高まっていて、ボリュームを上げていってハウリングが起きるボリューム位置がグンと上がったのはもちろんとして、フォノイコライザーの残留ノイズがスピーカーからかなり聞こえてくるような状態でもノイズ自体の質感が変化せず、ハウリング直前の膨張感自体が起きづらくなっているなと感じます。
RTS-30の効果ももちろんですし、サクションユニットの電源をオフにしたのも影響しているのでしょう。

しばらくFR-2で使い続けた後、ZYX Ultimate 100にカートリッジを交換してみました。
こちらでもベールが剥がれたような清々しさがありますし、FRよりもさらに音の芯がハッキリしていて余計な響きが少ないように感じるのはカーボンカンチレバーの効果かもしれません。
ただそんなカーボンカンチレバーもこれまではややドライになりがちな印象があったのですが、RTS-30導入後は色彩感も満ち溢れてきて、カートリッジの音色を強調するというよりも本来の性能を活かせる土台がしっかり構築された感があります。
Absolute LEAD WIREの真価も発揮されてきたとも言えそうな骨太な低域が素晴らしく、内周でも瑞々しさを失わず躍動的です。

カートリッジなどでの音色の変化もアナログ再生の楽しさではあると思いますし、レコードプレーヤーの性能も重要でしょう。
ただ、お気に入りの機材が持つ本来の性能を引き出すという意味でも、RTS-30はまさに「縁の下の力持ち」であると感じた次第です。

モバイルバージョンを終了