MacBSの日常生活的日記

ACOUSTIC REVIVE absolute LEAD WIRE

ACOUSTIC REVIVEからPC-TripleC/EX導体を採用したアナログリード線「absolute LEAD WIRE」が出ているのをStereo誌で知り、導入してみました。

テフロン絶縁のPC-TripleC/EXの単線で出来ているとのことで、極めて硬いために取り付けが困難ですからカートリッジとヘッドシェルを一度送る必要があります。
また、リード線はKS-REMASTA主宰の匠、柄沢伸吾氏の手で製造され、取り付けも実施されます。
後述しますがリード線の取り回しも匠ならではの技がありますので、やっていただくほうが効果が出ますね。
なお、発送はご自身で厳重に梱包して販売店経由あるいは直接、ACOUSTIC REVIVEさんに送る形です。
ただこれだけのリード線ですから、取り付けるカートリッジも高価なものでしょうし、カートリッジによっては針カバーがないもの、オリジナルの針カバーが取れやすいケースやそもそも破損した場合に替えが効かないものも多いでしょう。
そういう場合に備えて、ACOUSTIC REVIVEさんからカートリッジケースを事前に送ってもらうことも可能となっていますので、そちらを積極的に活用されたほうが良いかもしれません。

どのカートリッジを送るかもちょっと迷いましたが、同社のWebサイトでもLyraはお試し済みのようでしたし、現行のZYX Ultimate 100とMy Sonic Labのヘッドシェル、そしてCardasのリード線を付けた状態でお送りしました。
送付前にいつも客観評価のために録音しておいてあるので、届いて動作確認した後、その曲を録音してみることに。
ただそのままにしておいたPCM-D100で録音を始めてすぐ、レベルオーバーでやり直すことになってしまいました。
どうやら送付前よりも出力が高くなっていて、PC-TripleC/EXの伝導率の高さが早速威力を発揮しているようです。

録音しながらモニターしていても、左右のバランスや音の安定度も全く違っていて、もはや別のカートリッジ、あるいは別の盤かと思うほどです。
音の安定感については以前のリード線より0.3g程度重くなっていますが、それで改めて水平を取り直していますし、やはりリード線の取り回しも大きな違いとなって表れているのだと思います。
録音した楽曲の先頭部の周波数特性をいつものようにAudacityで出してみます。

下のCardasと比較すると5kHzから上はやや低くなっているのですが、20〜40Hzや20kHz以上は逆に伸びているのが見て取れます。

レベルオーバーしたことで録音レベルを下げたわけですが、実際に聴き比べるとRMSとしての音圧としては低くなっているようで、absolute LEAD WIREのほうが相対的に音圧が低めに感じます。
ダイナミックレンジが広がったようで、低域を始めとするピークパワーが相対的に高まっているのでしょう。
聴感では高域もスッキリと現代的になっていますし、低域もキレがあり、楽器の分離も素晴らしいのですが、周波数特性だけではそれはなかなか読み取れないようです。
これはあくまでも推測ですが、レコード再生時の「ロー上げハイ下げ」の逆RIAAカーブが関係しているのではないかと感じています。
absolute LEAD WIREは信号のロスが少ないため、低域もしっかりフォノイコライザーに伝達され、逆RIAAカーブによる補正が本来の想定通り、リニアに効いた結果、このような特性になっているのではないかというわけです。
そうなると、ヘッドアンプの入力インピーダンスも変更を試してみる価値はありそうだなと思いましたので、そちらも試してみました。

こっちはGIFファイルにしたのでサムネイルをクリックしていただけると100Ω、30Ω、10Ωの特性がご覧になれます。
それぞれの24bit/192kHzでの録音後のFLACのファイルサイズは以下の通りで、100Ωが195.5MBといちばん大きく、単純な情報量としてはこれがベストのようです。

100Ω: 195.5MB
30Ω: 195.1MB
10Ω: 194.9MB

しかし何枚かのディスクで聴き比べますと、聴感的には30Ωが良好そうに思えます。
100Ωだと低域が少し緩く、以前のリード線に似た傾向が出てくるためです。
10Ωだと少し大人しくなり過ぎる感もありますが、楽器の分離はより良くなっている部分もあります。
この辺りはご使用のヘッドアンプにも依ると思われますが、それを見直す必要があるくらい、absolute LEAD WIREの変化は非常に大きなものです。

なお、以前のリード線とのFLACファイルサイズを比べてみますとabsolute LEAD WIREが195.3MB、Cardasが195.7MBでした。
My Sonic Labのリード線が194.5MBでしたので、それよりは明らかに情報量が増えています。
Cardasの場合は中高域は伸びているにも関わらず、20kHz以下が落ち込んでいますし、やや装飾的な色合いがあるのかもしれません。

ここから先は愛聴盤を次々に実際にスピーカーで聴き比べていきます。
まず懸念の入力インピーダンスですが、結論としては30Ωが現代的で楽器の位置関係や音色も正確で、うちの環境ではこれがベストと判断しました。
100Ωだとちょっと聴いたところでは低域の量感があって力強さがあるように感じますが、音像が膨らんでボヤケています。
定位もその分曖昧になりがちですから、absolute LEAD WIREのメリットを活かせるのは30Ωのほうだと判断したというわけです。

入力インピーダンスが決まれば、あとはもう楽しい音楽の時間が待っていました。
クラシックでは包まれるような音の広がりで、つい音量が大きくなってしまいます。
特性的に捉えれば、左右のバランスや位相の精度がまるでハイレゾ音源を聴いているかのように高まっているのですが、そんな解析的なことをメモするのが勿体ないくらい、今奏でられている音楽に包まれていたいと感じてしまいます。
ちょっと古い喩えですが、レコードコンサートを自宅で開いているような気分で、今ここで奏でられている音楽を心から楽しみたいと思える時間が流れていきます。
控えめに言っても同じカートリッジや盤だと思えないほど、シンフォニーの豊潤な奥深さが引き出されてきて、どの盤を聴いても新鮮な驚きに満ちています。

それではレビューになりませんからもうちょっと冷静に捉えてみますと、「こんな音が入っていたのか」という場面が多々あるわけですが、同様に「ああ、ホントはこんな配置でこんな音色が正しかったのか!」と気づかされる場面も多々あることに気づきます。
さきほどもチラッと逆RIAAカーブの話を書きましたが、まさにその再現性が高まったような印象で、それにより楽器本来の音色、響きがより自然かつ活き活きと再現されるようになったのではないでしょうか。

もちろんリード線だけでたどり着くわけではないのでしょうが、今までは弱まった信号を無理にヘッドアンプで増幅している感があったのですが、absolute LEAD WIREに交換した後は豊かなピックアップ信号を余裕を持って増幅できているように感じます。
試聴しながら書いたメモに残してあった「ヘッドシェルに小さな増幅段を置いたような」というのが、これを端的に表しているような気がします。

そうなるとやはりPC-TripleC/EXを使ったトーンアームケーブルの登場も期待したくなってしまいます。
ただ、純粋にPC-TripleC/EXの単線だけを使ったケーブルはどうしても原材料費がかさんでしまいます。
私のシステムではバランスや予算的に厳しいですし、カートリッジにより近い部分のほうが効果は出しやすいわけで、その意味でもリード線は(あまり使いたくない言葉ではありますが)、コストパフォーマンスの点でも優れていると感じた次第です。
さすがに気軽にオススメできるものではありませんが、すでにお気に入りのカートリッジをお持ちなら、無理に高価な最新のカートリッジに乗り換える前に試してみる価値は十分にあるのではないでしょうか。

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