MacBSの日常生活的日記

ACOUSTIC REVIVEレーベルを試聴

11/15発売予定のACOUSTIC REVIVEレーベルのCD3枚を発売前に試聴させていただく機会をいただきました。

以前も書いたとおり、オーディオアクセサリーブランドとして確たる地位を築かれているACOUSTIC REVIVEさんが「最高峰のハイレゾ音源を提供するクラシック専門レーベル」として発足させたレーベルです。
録音に同社の機材を使っているのはもちろん、その拘りを全てに反映させた作品になっています。
ちょっと語弊があるかもしれませんが、LINN RECORDS的な志向もありつつ、ある種、ACOUSTIC REVIVEさんの拘りがオーディオという枠からはみ出して音源そのものにまで広がったとも言えるでしょう。

11/15に発売になるのは以下の3作品で、その全てをお借りしました。

・野入志津子 / Aure nove
  (アーチリュート,オランダの教会での24bit/96kHz録音)
・パトリック・デネッカー / HANDEL RECORDER SONATAS
  (リコーダー,ヴィオラ・ダ・ガンバ,チェンバロ,ベルギーの教会での24bit/96kHz録音)
・福原彰美 / ブラームス: ピアノ小品集
  (ベヒシュタイン・ピアノ,神奈川県立相模湖交流センターでのDSD録音)
(敬称略)

まず全体に共通しているのは余計なエフェクトやリミッタなどを全く感じさせない、心地よく素直に心に沁み込んでいく音楽そのものに魅了される点です。
正直どれも耳馴染みのある有名な楽曲ではないのですが、試聴やオーディオ機器のレビューといった感じではなく、ゆったりと音楽に浸ることができます。
オーディオ系レーベルというとオーディオチェックディスクと言わんばかりに派手な演出が目立つものが多いですが、そういった誇張は微塵も感じられません。
e-onkyoでハイレゾ配信されるとのことですが、CDでもその素晴らしい録音はハイレゾに劣るどころか、CDという器の度量を再認識させられるものです。

前置きはそのくらいにして、まずは1枚目の「Aure nove」から。
正直に言って回数としていちばん良く聴いたのが実はこのディスクです。
楽器の素養のない私にとってはアーチリュートはあまり馴染みのない存在ですが、それがかえって新鮮ですし、演奏も楽曲も素晴らしいもので、初聴からスッと通しで聴いてしまいました。
録音も前述のように素直で教会の響きを誇張することなく自然に収録してあり、聴いている間、しばしその空間を独占しているような気分に浸れます。
シンプルな構成なので、オーディオシステムに求められる性能もそれほど高くはなく、まずは音楽としてとても素直に聴き入ることができる作品に仕上がっていると思います。
もちろん、その空間再現にはそれなりの技量が求められてくると思いますが、まずは素晴らしい音楽を純粋に楽しむべし!というレーベルの趣旨なのかな、と勝手に思った次第です。

それに比して2枚目の「HANDEL RECORDER SONATAS」は楽器の数も増えますから、少し再生の難易度が高い感じです。
低域の誇張感のなさは同様ですが、P-600や壁コンセント交換前はやや雑然としてしまっていたところがありましたが、P-550導入以後はグッと鮮度も上がりました。
そういう意味ではオーディオチェックディスクとしてのポテンシャルは、3枚の中ではコレがいちばん高いかもしれません。
と言っても、いかにもデモ的なドンシャン鳴るものではありませんから、ひたすら穏やかに澄んだ空気の中に流れる、優雅な音楽の時間を満喫する感覚のほうが圧倒的に優位に立っています。
オーディオ的な観点でいえば、楽器の分離や音色、録音された部屋の響きがキレイに再現できているか、などがチェックポイントとなることでしょう。

そして3枚目の「ブラームス: ピアノ小品集」はピアノ作品ということで、一応自宅にグランドピアノを置いている身としてはいちばん厳しい視点(聴点?)で聴いてしまいます。
自分でもやってみていますし、ピアノのCDはそれこそたくさん持っていますが、とにかくピアノの録音というのはひたすら難しい印象があります。
まるでボーカルみたいに中央にポツンとあったり、それこそ鍵盤だけが肥大されてしまったりと、ディスクによって様々です。

そんな中、最初に感じたのは鍵盤左手の再現がとても素晴らしいという点です。
打弦の基音はもちろん、グランドピアノの持つ豊かな響きや余韻、そしてホールの響きに伴うピアノの実在感がとても良く再現されています。
単純に書くとすれば、直接音と間接音のバランスが良いということなのでしょう。
高域側の右手もともするとキンキンと硬さが目立ちがちなところ、パルシヴな勢いは消さず、ベヒシュタインの音色もしっかり再現されています。
ピアノメーカーでその音色は大きく違うと思うのですが、とりわけこの高音域はメーカーの特色が表れやすい部分だと思いますし、今のピアノに出会わなければBechsteinを選んでいた可能性も高かった我が家にとっては、聴いていて嬉しい音色です。

余韻の再現についても素晴らしく、他の2作の長めの余韻だけでなく、かなり幅広い周期の余韻がバランス良く再現されていて、そこはDSDらしいところなのかなと。
できればハイレゾでも聴いてみたいと思っていますが、あいにくうちにはしっかりしたDSD環境がないのが難点です。
今後の作品に関しては、ぜひSACDでの発売も検討してほしいところです。
ただ、どのCDもUHQCDとなっていて、そう簡単にハイレゾ音源に負けるようなものではありません。

今回、レーベル初の3作品を聴かせていただいたわけですが、ある意味、オーディオマニアの音楽的素養を底上げする作品たちだと感じました。
その意味でも、他ジャンルへの横展開にも期待したいところです。
個人的希望としては高音質なライブ録音盤が最近減っているので、そういったものを出してほしいという思いもあります。
レコードでライブ盤を聴くとライブらしい鮮度を感じるのですが、最近のものは映像作品のついでになってしまっている感があるためか、どうも魅力が薄いと感じています。
録音はさらに難易度の高いものになりそうですが、まずはこの3作品が多くの音楽ファンの手元に届いてほしいと思います。
なお購入はAmazonはもちろん、ディスクユニオンさんが流通元になっているのでそちらでも是非どうぞ。

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