MacBSの日常生活的日記

Oriolus Finschi レビュー 音質編

Oriolusのイヤホン「Finschi」もずいぶん馴染んできましたので、音質について書いてみたいと思います。

私の好みにピッタリはまったのかお気に入りになってしまったので、良さしか耳に入ってこないところがある点を差し引いて読んでいただければ幸いです。
とにかく聴いていて楽しいイヤホンでして、初めて聴くアルバムでも飽きるどころか、ついつい時を忘れて全部聴いてしまいます。

そうは言いつつも冷静に分析的に聴いてみますと、オーディオでいうところのモニタ的な解像度は必ずしも高いわけではありません。
同じような価格帯のカナル型と比べても、もっと情報量や音の精度が高いものはそれなりにあると思います。
ある種、良質なギターアンプを通して聴いてるような魅力があり、個々のプレーヤーの躍動感だとか情熱のようなものを瑞々しくエモーショナルに伝えてきます。
音楽を聴くのにももちろん良いですが、楽器やボーカルのモニタに使うとまるで自分の演奏が上手くなった、ワンランク上の楽器を使っているような感覚を持つのではないか、そんな雰囲気のする音色です。

1BAとダイナミックユニット搭載ですが、このつながりは最近の機種ならもはや当たり前ではありますけれど、うまく融合されていてケンカするようなところは一切ありません。
むしろ融合して位相も整っているから、楽器の音が本来の音色をしっかりキープしています。
その上でBAのほうは空間的な広がりをより高めてくれる方向に振ってあるように感じられ、それが「聴く楽しさ」に大きく貢献しているように感じ取れました。

全体の音作りとしては中域の濃さを大切にした感じですが、中低域もかなり厚めです。
この辺りはイヤーピースでもずいぶん変化するところなので、それらで調整可能な程度の癖ですが、DAPやアンプの違いが如実に出やすい傾向は感じました。
iPhoneやちょっと癖が強めなポタアン経由だと粗さが出てしまうことがありましたし、PLENUE Sは音質面の不満はないものの、なんとなく真面目過ぎて硬めの表現になってしまい、Finschiとの相性はあまり良くありませんでした。
どちらかというと、やや暖色系のアンプと組み合わせたほうが相性が良さそうです。
うちにあるものですと、Ak300+Ak380AMPがいちばん相性が良いようです。

Finschiを聴いていて新鮮な発見が多いのは管楽器でしょうか。
まず音色が自然ですし、それが脳内定位し過ぎず、実在感のある風合いに聴こえてくるところによるものが大きいのでしょう。
前述のように前方定位感があることも効いています。
ボーカルも明瞭で、歌詞がとても聴き取りやすいのが印象的でした。
ピアノやアコースティックベースも奏者も聴き手もまさに弾むように楽しめます。

ジャンルも特に選ぶわけではありませんが、とりわけジャズとの相性はとても良いようです。
普段だと数曲でちょっと飽きてしまうようなアルバムでも楽しく全部聴けてしまうから不思議なものです。
なんとなくその場に参加しているような、そんな気配が色濃いおかげではないかと思います。
もちろん、音質がイマイチだとやはりそれなりに物足りなさも出てくるのですが、単なるカラーレーションではなく、アコースティックなバイブレーションをより強く引き出してくれるので、どんな音源でもライブ感が高まる傾向で、スタジオ録音がスタジオライブになるといえば多少大げさかもしれませんが、そんな印象を受けるサウンドです。

ある意味、レコードっぽいという喩え方もできるのかもしれません。
たぶん普通に言われる暖かい音とはちょっと違うけれども、そういった要素も多少なりとも含まれているようには思います。
そのおかげか、ポリーニの練習曲集をデジタルで聴いて良いと感じたのは初めてでした。

それがどこから来るものかは定かではありませんが、金属筐体でないので余計な響きが付かないところもあるのかもしれません。
かといってプラスチック筐体にありがちな軽さやカサつきもないのは装着感の良さも影響しているでしょう。
装着感に関してはイヤーピースも大きな要因ですので、純正フォームと私の耳の相性が良かったおかげもあるとは思います。
付属のイヤーピースにはダブルフランジやフォームタイプもあり、それらもなかなか良いものでした。

純正のシリコンイヤーピースは耳に装着して少し温まってきたほうが密着度が高まりますが、緩すぎないピッタリフィットするものを選ばないと低域が抜けた感じになってしまうことがありました。
ダブルフランジも耳の奥まで押し込む違和感は少なめで、音色としてはややモニター調になって明瞭さは向上します。
ただ、Finschi独特の広がりはやや失われがちでボーカルの距離もかなり近くなる傾向です。
帯域はよりワイドに感じられるので、屋外主体に汎用的に使うケースならかなりお勧めできる組み合わせでしょう。
純正フォームのほうもフォームにしては音が曇りにくいのですが、やはり音を吸われてしまう感覚は多少出てきます。
高域にキツさを感じるようなケースなら、こちらも十分常用に値するものだと感じました。

また他のイヤホンとかなり違う印象を持つ理由をもう少し考えてみますと、かなり低い帯域の歪みが少ないのかな?という推測に至りました。
ダイナミックユニットの詳細は公表されていないので不明なのですが、ユニット自身に加えてエンクロージャーやフィルタ、音導管なども関係しているのでしょう。
単にレンジとして低音が出るのではなく、一音一音の精度が高いおかげで、音楽に没頭することができるようになっている気がします。

もっと高級なIEMには解析的な質感が高いものはいくらでもあるでしょう。
ただ、音楽に寄り添った部分の深さを感じさせてくれるイヤホンというのはそう多くないようにも思います。
同社の後継モデルや上位機種はどうなんだろう?と気になるところですが、お値段も含めて音楽自体を楽しみたい方にオススメできるイヤホンだと感じた次第です。

モバイルバージョンを終了