MacBSの日常生活的日記

茶楽音人 Donguri-鐘 HAGANE ver. レビュー 音質編

茶楽音人さんの新作イヤフォン「Donguri-鐘 HAGANE ver.」ですが、エージングも進んできたので、いよいよその素晴らしい音質に触れていきたいと思います。

なお試聴機材は主に以下の構成で試していきました。


DAP: iPod nano 7th / iPhone 4
DAC: Cypher Labs Algorythm Solo
Cable: ALO audio SXC22 Mini to Mini
Amp: ALO audio Rx MkII

前回も書いたとおり、今回からSpinFitが標準になったということで、その音傾向もSpinFitでチューニングしてきたという印象をまず感じました。
Complyは耳への密着感が高く、低域も厚くはなるものの、音全体が濁るというか、吸音材のような働きをする部分もあります。
その点、SpinFitは音傾向としてはシンプルなシリコン製イヤーピースでありつつも、耳へのフィット感が良く、ユニットの音をダイレクトに伝えてくれます。
その分だけHAGANEはダイレクトな状態で最善の音質バランスを作り上げてある、とも言えるかと思います。

全般的な音の印象はいかにもソリッドで現代的なスピーカーのような風合いです。
今までもDonguriはそのどんぐり部分の特徴を強調する傾向も多少あって、やや音場を強調しすぎる傾向にありましたが、今回はユニットからのダイレクトな音と、どんぐり部分からの音の広がりがウェルバランスで、より汎用的に使いやすくなったと感じます。
以前の鐘 KURENAI ver.でも実際には低域は出ていましたが、ややダイレクト感に欠けていましたが、今回はDonguriの音場も生かしつつ、どちらかと言うとそれを味付けにしてダイレクトな音のバランスが整えた傾向です。
両バージョンが残してあるのはその音傾向の違いを選べる、という要素もあるのではないかと思います。

その音傾向から、特にパーカッションやギターの時にダイレクト音と反響音のバランスが非常に良くなり、パルシヴさが心地よいものとなっています。
最低域もしっかり伸びていますが、あえて重低音を無理に押しつけてくるタイプではなく、精度高くソリッドに鳴らす雰囲気です。

高域の透明感は変わらず、低域が充実しただけに刺さるような印象は薄らいでいて、その点でもより扱いやすいイヤフォンになっています。
それでも他のイヤフォンに比べると鮮烈な高域傾向ではあるので、そこは鐘の血統を引き継いでいますけれど。
ただしそれは悪い意味ではなく、先日のPLENUEをお借りした時にKUREINAIで感じたハイレゾ音源で活きてくる印象がさらに強まったように思いますし、SpinFitの良さが出ている面もあると感じます。
もちろん、ハイレゾ音源でなくロスレス音源でもロッシーとの差異が明瞭に出てきて、音源の全てを引き出そうとしているかのようにすら思えるほどです。

全般に言えるのは、上記の通り、とにかく非常に情報量が多いという点で、これは下手なモニターヘッドフォンでは負けてしまうかも。
Donguriの構造がオープンエア型のような音場を生み出しつつ、それが音のダイレクト感やスピード感を失わないバランスが生み出した成果かと。
それだけに穏やかに音楽を楽しむというよりは、その世界観に浸って聴きこむようなものに仕上がっています。

楽器ごとに聴きこんでいくと、良質な録音のヴァイオリンでは、その弦の掠れが非常に細やかに伝わってきます。
オーケストラの音と混じらずに鮮明さが保たれつつ、その場の雰囲気やバランスもしっかり再現されています。

反面、私はあまり聴かないジャンルですがロック色の強い楽曲では、まだ少し低域が薄味かなと感じる場面もありました。
これに対処すべく、SpinFitのサイズを調整してみたりしましたが、私にはMがやはりちょうど良いようです。
Lにしてみたところ、これだとドライバーが浮いたような感じになり、フィット感が悪くなって低域もさらに薄くなります。
SpinFitに限った話ではありませんが、イヤーピースはしっかり耳にあったサイズを選んだほうがダイレクトさが味わえると感じました。

そういう意味ではさきほどもあげたパルシブな低域を含む楽曲やピアノ、ヴァイオリンといったアコースティックな楽器に向いていると言えそうです。
基本的に私が聴く範囲は結構広いほうだと自負していますが、ポップス全般、クラシック、ジャズなど、ほぼそつなくこなしてくれるはずです。
重低音でごりごり押してくるようなものを期待すると、それはちょっとブランド傾向自体が違うと思いますから、そうしたニーズには不向きでしょう。

また、これは直接試聴とは関係ないように思えますが、KURENAIと見た目を比較すると、ハウジングの加工精度も上がっています。
そうした細かいノウハウの積み上げの上に生まれたモデルだけに、完成度の高いバランスを安定して再現できているとも言えそうです。

次回はそんなKURENAIやDonguri-楽 濃茶、その他の手持ちのイヤフォン、ヘッドフォンとの比較や音源による違いなどをレポートしたいと思っています。

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