• 0712月

    エージングに少々手間取りましたが、茶楽音人さんからお借りしているイヤフォン「Donguri-鐘(SYOU)」の音質について書いてみたいと思います。

    茶楽音人 Donguri-鐘(SYOU)

    濃茶については先行してレビューし、「楽としてのひとつの完成形」ではないかと書きましたが、鐘はある意味、実験的、挑戦的要素を大きく含んだ製品だと感じています。
    Donguriは元々、木材を利用してそのキャビネットの響きを活かした「音造り」が特徴ですが、今回はそこにアルミ素材を使ってあることで、やはりどうしてもその金属的な響きは伴っています。
    内部は天然素材でダンピングされているそうですし、実際に左右の筐体どうしを軽くぶつけてみてもアルミのような響きはないのですけど、サウンドには独特の、まさに「鐘」のような風合いがあるのです。

    その辺りは徐々に説明していくとして、エージングによる変化の大きさもレビューが遅くなった理由の一つです。
    エージング前の開封したてはとても自然で、楽にかなり近い、ライブのような温かみがあるものでした。
    女性ボーカルの高域部分にやや固さは見られたものの、いわゆる「刺さる」ということは全くないものでした。

    ところがここから10時間くらい経った頃から、じゃじゃ馬のような中高域が顔を出してきました。
    全ての楽曲で、というわけではないのですが、特定の楽器、例えばトライアングルやベル、クラリネットなどが、いかにもそれだけ音の出元が違うかのように飛び出してき始めました。
    この傾向、何かに似ているなと思ったら、アルミやダイアモンドツィーターを使った2wayスピーカーのエージング中の音傾向です。
    周波数特性に現れるようなものではなく、ある種、素材の色合いみたいなものでしょうか。

    茶楽音人 Donguri-鐘(SYOU)

    この段階ではこのまま落ち着かなかったらどうしよう?というくらいに激しい主張のある中高域だったのですが、30時間を過ぎた辺りから多少の慣れも入ってきたのかもしれませんが、他の楽器とのバランスが取れるようになってきました。
    ただ、強度がやや収まった形で、控えめになりつつも主張自体はそのまま残っているので、これ自体は鐘が意図した音色なのだと思われます。

    茶楽音人 Donguri-鐘と楽 濃茶

    ここで同様にエージングが終わった濃茶と比較してみると、解像度が明らかに鐘のほうが高いのが分かります。
    鐘のほうは重心が少し上で、モニター的ですし、別の言い方をするとすれば現代的なサウンド傾向かと。
    低域の沈み込みも実はむしろ鐘のほうが伸びているように感じるのは、おそらく高域がしっかり伸びているからだと思われます。
    また、濃茶よりも当初のDonguriっぽさは少なめで、音場感とダイレクト感がほどよくバランス取ってあります。

    これだけ捉えると明らかに鐘の圧勝なのですが、音傾向にはかなりの差があり、万能さを持っているのはむしろ濃茶のほうだと思います。
    濃茶は広い音場感を与えつつ、以前の楽と比べて中低域をほどよく持ち上げて、使いやすい仕上がりです。
    対する鐘のほうはフラットな中に個性的な中高域の響きが刺激成分として入ってくるものですので、これを好みのエッセンスと捉えられるかが評価の分かれ目になるでしょう。

    茶楽音人 Donguri-鐘(SYOU)

    試しにComplyから付属のSpinFitに交換してみる、というのもやってみました。
    しかしこれはむしろ高域寄りにシフトする傾向で、基本的にはやはりシリコンイヤーピースの音ですね。
    これはこれで悪くありませんが、鐘の個性を消すようなものではありませんし、むしろ鐘ではコンプライの厚みが恋しくなるように私自身は感じました。
    それでも耳へのダイレクト感をもっと、という場合にはSpinFitを使ったほうが好結果が得られるかもしれません。
    なお、SpinFitについてはいろんなイヤフォンで試してみた結果を別途レビューできればと思っています。

    次に再生環境や楽曲のジャンルを色々変えながら聴いていきます。
    まずはiPhone 4直挿しからDock端子経由のD2+ Hj Boaを試しますと、透明感に大きな違いが出てきます。
    まるでスピーカーがマルチwayになったような帯域感がありますが、やや高域が別ユニットっぽくもあるのは鐘のハウジングの特徴からでしょうか。
    濃茶同様、iPhone直挿しでもフルレンジのような、まとまりの良さはありますが、よりレンジが伸びているだけに、iPhone単体ではやや不明瞭に感じて、押しだけ強くなる傾向ですので、鐘のほうが良い再生環境が求められるように思います。

    また、音圧を上げてある楽曲や圧縮音源ではうるさく、刺さるように感じるケースが増えるようです。
    逆に空間を感じられる好録音ではその良さが活きてきて、セッティングまでしっかり追い詰めたスピーカーを聴いているような感覚を味わえます。
    不思議なことに他のイヤフォンでは無視できるレベルのiPhoneの通信ノイズがかなり顕著に聞こえたりするところをみても、環境的なSNが高く、機器ノイズや録音の歪みに敏感な部分があるのでしょう。

    楽曲のほうではどのジャンルでもバスドラムが印象的な鳴り方をしていて、イヤフォンではなく、ウーファーのそれに近い印象を受けました。
    これも2wayスピーカーっぽさを感じた理由の一つでしょうし、チューニング的にはややロック、ポップス寄りかもしれません。
    クラシックのロスレス音源ではその分解能の高さがしっかり活き、上品というよりは精錬された音を聴かせてくれます。
    濃茶のように艶がほどよく付加されるというよりはむしろモニター的で、その辺りは好みが分かれるところでしょうか。

    茶楽音人 Donguri-鐘(SYOU)

    まだもう少しエージングを進めたいなと思うところですが、現時点ではまさに名前の通りの「鐘」を意識した実験的なモニターサウンドに仕上げてあるようです。
    いずれにしてもDonguriは「足し算の音、ONの音」だと感じていて、何かを上手に付加することでその特徴を積極的に楽しむ製品だと思います。
    余談ですが、私が別途愛用しているSHUREのSE215などは真逆で「引き算の音、OFFの音」で、個性や耳との相性から来る特性のムラを押さえこんでそつなく聴かせるタイプだと思うので、ある意味、鐘とは真逆の存在でしょう。

    それだけに鐘に限らず、Donguriシリーズは、できれば試聴をオススメしたいところです。
    都内周辺なら、フジヤエービック、eイヤホン、ビックカメラでは「池袋本店、渋谷東口店、立川店、なんば店、有楽町店、札幌店、新宿西口店、名古屋店、大宮店、ラゾーナ川崎店、ビックロ、ソフマップ秋葉原本館の計12店舗にて試聴機も用意」されているそうですので、お近くの方はぜひ一度耳にされてみてはいかがでしょうか。
    その際にもエージングの度合いが不明なので、最終形と考えずに音傾向を知る程度に捉えておいたほうが良いですけどね。

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    2014/12/07 7:00 pm | 茶楽音人 Donguri-鐘(SYOU) レビュー 音質編 はコメントを受け付けていません。

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